第6回邦人安全対策会議報告(平成24年の邦人援護状況等)

 

1月15日,当館において第6回邦人安全対策会議を開催しましたので,その概要をお知らせします。皆様の安全のためにご活用いただければ幸甚です。

 

1.開催の挨拶
会議冒頭,当館首席領事が以下の開催の挨拶をしました。
当地の全般的な治安情勢については特段大きな問題はありません。政治面では基本的に安定しており,昨年12月9日にホーチミン市内で対中国抗議デモが発生しましたが,当局の規制により短時間で解散しております。邦人の犯罪被害件数は前年に比較して若干減少していますが,窃盗や詐欺といった犯罪被害に遭うケースは依然として多く,ホーチミン市公安当局より,本年以降はバイクによるひったくり犯罪が増加する可能性があるとの指摘を受けており,より一層の注意が必要となります。また,昨年11月ハノイ市内ホテル内において発生した従業員による強盗殺人未遂事件等,邦人の巻き込まれる犯罪が凶悪化する傾向にあり,サービスアパート,ホテル等においても戸締まりや不審な動きには十分注意する必要があります。

 

2.平成24年の邦人援護状況及び被害対策等について

当館担当領事が,当地における平成24年の邦人援護状況及び被害対策等について,以下の説明を行いました。

 

(1)平成24年の邦人援護の傾向

 ア.総援護件数は254件。その内犯罪被害が最も多く161件。件数は平成23年比でともに減少。
 イ.傷病及び死亡案件の増加
 ウ.遺失及び各種相談の増加

 

(2)犯罪被害

 ア.犯罪被害にかかる邦人援護件数(月別)

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平成23年 12 22 11 9 18 18 9 19 25 25 21 12 201
平成24年 11 22 18 15 14 14 12 12 9 16 8 10 161

平成23年比で-40件。特にいかさま賭博被害が大きく減少。例年テト(旧正月)期間前後に被害が集中しているため。今後注意が必要です。

 

 イ.犯罪被害にかかる邦人援護件数(形態別)

 

バイクによるひったくりは82件と依然として多く全体の半数を占めます。

 

 ウ.ひったくり被害

  (ア) 邦人の刺傷事例はないものの,被害品の奪還を試み犯人を追跡したベトナム人が刺殺されるといった事案も発生しています。
  (イ) 本年以降は,麻薬使用犯罪者に対する強制収容措置が廃止される予定があることから,ホーチミン公安当局は,事実上野放しになった麻薬中毒者による犯行の増加を危惧し,警戒を強化しています。
  (ウ)

平成24年の特徴点

  • 昼間時間帯の被害割合が増加

  • タクシー待ち及び乗降時の隙をねらった犯行が増加

  • スマートフォン,タブレット端末を手にした歩行者,財布やノートパソコンが入っていそうなバッグ所持者が依然として狙われる

  • 邦人旅行者が利用するホテル,在留邦人が居住するアパート出入口付近において,出入りを待ち伏せする手口が依然として多い

  • タンビン区、フーニャン区内(空港付近)や7区内等、市内中心部以外での犯行も散見される

【被害事例(女性在留邦人)】

午後2時頃、7区内のクレセントモール付近歩道を徒歩移動中、背後から徒歩で近づいてきた男性にネックレスを引きちぎられてひったくられ、犯人は仲間のバイクで逃走。幸い怪我はなかった。

  (エ)

対策

徒歩で移動する場合は極力手ぶらで外出し、携行品がある場合,タクシー等自動車で移動する。
※タクシーを拾う際,自身で路上に出て拾う行為は極力避け,店員や警備員等に呼んでもらうとともに,乗降の際も警戒を怠らないように。
バッグ類を所持して徒歩で移動する場合は,昼夜地域を問わず常にひったくり犯人に狙われているという心構えで、道路側に持たず,建物側を歩くこと。たすき掛けは,怪我をするケースが多く勧められない。
※リュックタイプのものを両肩に前掛けにする等相当の警戒が必要です。
スマートフォン等の高額物品・現金は人前で出さず,見られないように。
特に,ホテル,アパート等の出入りの際は,自分を注視・尾行する者がいないか周囲を警戒する。
女性は夜間単独での外出を控え,目立つ高価な装飾品を身につけないよう心がける(特にネックレス)
万が一被害に遭った場合,決して追いかけたり,抵抗したりしないこと

 

 エ.いかさま賭博被害

ひったくりに次いで件数の多い手口ですが、昨年10月末に当館支援によりフィリピン人犯行グループが摘発されて以降被害は認知されていません。しかし、新たな犯行グループが訪越する可能性も否定できず、今後も

  見知らぬ者に安易について行かない
という対策を徹底するとともに、検挙のためには速やかな通報が必要であるため、被害に遭われた方には速やかに総領事館に報告するよう助言願います。

 

 オ.スリ・置き引き被害

  (ア)

平成24年の特徴点
  • 殆どが男性の財布をねらった犯行で、特に酔客が狙い撃ちに

  • テト(旧正月)期間前後に被害が集中

  • 「話しかけ」,「身体への接触」等で注意をそらした後,窃取する手口が目立つ

  • 高額現金所持者と露見した場合,あらゆる手口で狙われる可能性がある(高額現金両替、引き出し後など)

  • 置き引きは,空港,ホテルロビー内で発生
  (イ) 対策
見知らぬ者(女性・子供含め)が話しかけて(接触して)きた場合,警戒心を持つとともに他の仲間の動きにも注視する(殆どの場合,相手にしない方が無難)
飲酒し飲食店を出た後はすぐにタクシー等自動車に乗り込むよう心がける
テト(旧正月)に伴う催しや飾りを人混みの中で写真撮影する際には細心の注意を払うこと
現金の引出し,両替,会計の後等は,誰かが自分を注視していないか確認する等,警戒心を持つ
空港やホテルロビー内においても,貴重品の入ったカバン等は肌身から離さない。

 

(3)傷病関係

 ア.在留邦人や旅行者・出張者の緊急入院・死亡事案が増加。原因の多くは,脳出血・脳梗塞・心筋梗塞などの心臓血管病。高温多湿への急激な環境変化と過密なスケジュールによる過労などが重なり発症することが多いです。
 イ.特に年配で糖尿病や高血圧などの持病を持っている方の体調管理、体調の変化には注意をする必要があります。

 

(4)その他

 ア.タクシーにかかるトラブル

  (ア) 依然としていわゆる大手タクシー会社を模倣した偽タクシーやバイクタクシーによるぼったくりや脅迫事案が散見される。
  (イ) 多くがベンタイン市場付近で乗車したタクシーによるもの
  (ウ) 対策
空港から乗る場合は,市内までのタクシーチケットを購入して利用する
レセプションから呼んだタクシーまたは,大手ホテル玄関に待機しているタクシーを利用する
流しのタクシーを拾う際は,大手会社を選び,当館HP掲載の「ぼったくりタクシー防止カード」を活用する
ベンタイン市場、戦争証跡博物館等の観光名所付近で客引きしているタクシーへの乗車は避ける(偽タクシーの可能性大)
バイクタクシーやシクロは利用しない
万が一偽タクシー等に乗ってしまい、車内に閉じ込められた上、高額料金を要求されてしまった場合は、自身の生命身体の安全を第一に慎重に行動すること。
 

 イ.遺失

  (ア)

平成23年比で倍近くの援護件数となっており増加傾向。特に旅券については、出国直前になって遺失に気づくケースが多く、管理徹底をお願いします。
  (イ) 特にタクシー内での遺失が増加。降車の際の荷物確認はもちろんのこと、乗車の際も、他のトラブル対策も兼ねて会社名及び車両番号を記録するよう心がけること。
  (ウ) 旅券等日本人の遺失物品を拾得したとする越人から謝礼目的で接触を要求してくるケースが散見されますが、高額謝礼を要求してくる上、安全性も担保できないため、安易な接触は避け、総領事館に相談していただきたい。
 ウ.滞在先に戻れない旅行者等
  (ア) 旅行者等が道に迷い滞在先ホテルに戻れず公安等で保護される事案が散見されています。
  (イ) 特に年配の方に多く、夜間等は犯罪被害に巻き込まれる可能性もあるので、外出の際には滞在先ホテルの名刺を携帯させる等助言をお願いしたい。
  (ウ) また、夜間帯の長時間の所在不明等の場合は、躊躇せずに公安に届け出、総領事館にも報告をお願いしたい。

 

3.総領事館からのお知らせ等
当館担当領事が,当館からのお知らせとして,以下のとおり説明しました。

(1)在留届の提出について

 ア 在留届は,旅券法第16条により,義務付けられており,当国内において,事件や事故等の緊急事態が発生した際,当館よりの安否照会等の確認をする上で大変貴重なデータとなるため,3ヵ月以上滞在する方は提出をお願いします。
※追記:1月16日アルジェリア南東部のイナメナスにおいて,石油プラントが武装集団に襲撃され,邦人を含む外国人多数が犠牲になる事件が発生しています。この様な緊急事態の際の安否確認,緊急連絡等のためにも在留届の提出(登録アドレスはスマートフォンあるいは自宅PCのアドレスが望ましいです。)をお願いいたします。
 イ 「在留届」の記載事項に変更があった時や帰国する時にも,必ず在外公館に連絡すること。帰国の連絡がないと,緊急事態にあたり,在外公館は,帰国者の安否確認にも時間を割かれることとなり,実際の在留者の安否確認作業が遅れることにもなりかねません(連絡方法は、電話、FAX(08-3933-3525)、メール(ryouji@hc.mofa.jp)でも構いません。)。
 
 ウ 在留届は,インターネットでの電子登録も可能であるため,社員の方々や周囲の方々にも届出励行の呼びかけをお願いします。

 

(2)旅券について

 ア 
 
ベトナムへの入国に際しては,3ヶ月以上の有効期間が必要であり,それ以下の場合,入国を拒否されるケースもあり,不要なトラブルを避けるためにも,残存期間が3ヶ月以上の余裕のある状態で入国されることをお勧めします。特にテト(旧正月)期間中にベトナムから出国される方は要注意。
 イ 新規旅券の更新申請は,有効期限が1年未満になった時や査証欄の余白がなくなった場合可能です。なお,本年より当館における旅券交付所要日数が6業務日から4業務日に短縮されました。

 

(3)在外選挙人登録について
海外で日本の国政選挙の投票をするためには,居住地を管轄する在外公館での在外選挙人登録が必要であり,その登録手続きには通常1ヶ月~2ヶ月程度要する。選挙実施が判明した時点で申請しても間に合わない可能性があるため,早期の登録手続きをお願いします。本年は,昨年に引き続き,夏頃に参院選が予定されているのでよろしくお願いします。

 

4.意見交換
  出席者から以下の意見交換がなされました。
(1)バイク運転者に対する強盗事件について

 ア ベトナム人スタッフの親族が午後9時頃,バイクで走行中に並走してきた者から,突然,スタンガンによる電気ショックを受け,転倒し,複数回スタンガンによる電気ショックを受けカバンを強奪されそうになるという強盗未遂事件に遭遇している。また,スタンガンが中国側より多数輸入されているとの話があるので,今後,同種犯罪の増加が懸念され,注意喚起が必要と考える。
 イ 第7区から第2区へ渡る橋の近辺でも同様のスタンガンを使用したバイクを狙った強盗事件が報道されている。邦人を狙った事案ではないが,比較的容易に調達できる交通手段として邦人バイク利用者が増加している中,今後,邦人が同種被害に巻き込まれる可能性は排除できないことから,総領事館からの注意喚起を検討すべきと考える。
(当館)
情報提供に感謝申し上げる。これまでの事案等を分析の上,注意喚起を発出したい。

 

(2)外貨持ち込みに伴うトラブル等について

 ア 最近,ビジネスでホーチミンに来た顧客が出国の際,入国時に税関申告をしていなかったため外貨を全て没収されそうになるという事案があった。依然としてベトナムへの外貨持込みに伴う申告に関して承知していない人が多く,以前,総領事館で出した注意喚起を再掲載(更新)して頂いたり,何かの方策によりベトナムに来る邦人に注意喚起出来ないものか。
 イ 総領事館HP上での注意喚起だけではなく,より効果的に注意喚起を行うためには,特に航空会社,旅行会社の協力を得る形で行うことが,肝要と考える。
 ウ 最近の旅行者は,インターネット上で割安航空券やホテルの予約を行うので職員が顧客に面会し安全情報について説明できる機会が少なくなっている。こうした顧客に対して事前に安全情報を周知する効果的手段を考案する必要があると考える。
(当館)
了解した。今後,より効果的な注意喚起手段を構築していきたいと考えているのでご協力をお願いしたい。