第4回邦人安全対策会議報告

 

 

 1月13日,当館において第4回邦人安全対策会議を開催しましたので,その概要をお知らせします。皆様の安全のためにご活用いただければ幸甚です。

 

1.昨年の邦人犯罪被害状況等について
 当館担当領事が当地における昨年の邦人犯罪被害の特徴点及び対策等について,以下の説明を行いました。

 

(1)犯罪被害にかかる邦人援護件数【月別】

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
12件 22件 11件 9件 18件 18件 9件 19件 25件 25件 21件 12件 201件

2月のテト(旧正月)期間中は例年被害が多く,本年も注意が必要。
9~11月はバイクによるひったくり被害急増したため件数が増加している。 

 

(2)犯罪被害にかかる邦人援護件数【形態別】

 

計201件(前年比プラス70件)で,バイクによるひったくりが90件と最も多く,全体の45%を占める。次いでいかさま賭博被害49件と多い。

 

(3)昨年の邦人犯罪被害の特徴点

ア ひったくり被害の急増及び手口の凶悪化(45%以上を占め,1割以上が負傷)
イ 男性被害者割合の増加(約6割を占める)
ウ スマートフォン所持者があらゆる手口で狙われる
エ 依然としてベンタイン市場内及びその周辺での被害発生が最も多い
オ 話し掛けを利用した手口(特に日本語で)が目立ち,強盗に発展した事例も

(4)代表的な被害事例

ア 強盗
夜間,ベンタイン市場付近を散策中,ベトナム人男女から「今度家族が日本に行くので日本のことを教えてほしい」等と声を掛けられ,少し会話した後,自宅での食事に誘われ一緒に行くことになり,一緒にタクシーに乗ってしばらく経った後,人気のない所で突然降ろされ,現れた3人組の男にナイフで脅され,所持金等を全て強奪された。
【対策】

  • 見知らぬ者が話しかけてきた場合,警戒心を持つこと
  • 見知らぬ者の言葉を安易に信用せず,安易について行かないこと
  • 万が一強盗被害に遭った場合は決して抵抗しないこと

イ バイクによるひったくり

(ア) 背後から来た二人乗りのバイクに高額の現金の入ったバッグをひったくられたので,取り返そうと追いかけたところ,別のバイクの男から暴行を受け負傷した。
(イ) 手に持っていたスマートフォンをひったくられ,財布等が入っていたバッグもひったくられそうになったので抵抗したところ,バイクに引きずられ負傷した。

【対策】

  • 手ぶらでの外出を心がけ,移動はタクシー等を利用する
  • 高額物品,現金は人前で出さず,見られないようにする
  • 万が一被害に遭った場合,決して追いかけたり,抵抗したりしないこと

ウ スリ

(ア) ATMでお金を下ろした後,通りを歩いていたところ,3人組の男女に声を掛けられ,一緒に食事をして別れた後,ズボンのポケットに入れていた現金が盗まれていることに気づいた。
(イ) ベンタイン市場で買い物をしていたところ,ズボンの中に入れていたスマートフォンがいつの間にかなくなっていた。

【対策】

  • 高額物品,現金は人前で出さず,見られないようにすること
  • 見知らぬ者が話しかけてきた場合,警戒心を持つとともに他の仲間の動きにも注視すること
  • 人が多く集まる観光名所等では特に警戒心をもつこと

エ 空き巣
居住先のアパートを長期間留守にしている間に,何者かが合鍵を使用して居室に侵入し,現金等が入った金庫を盗んでいった。
【対策】

  • 警備員等の関与の可能性があり,別途個別に鍵をつけてもらう等の措置が必要
  • 使用人の雇用は,信頼できる人から紹介された者に限定し,確実に身分証等を確認すること
  • 使用人等に対しては,旅行・長期外出日程等をむやみに他人に知らせることのないよう教育しておくこと

オ いかさま賭博
市内観光名所を回っている途中で道に迷っていたところ,自称タイ人の女性が日本語で話しかけてきて道案内してくれた。その後,同人の妹に日本語を教えるために自宅に行くことになり,そこで食事の提供を受けた後,「いかさま賭博」に参加することになり,多額の現金を賭けさせられ,結果的に現金及び持っていたスマートフォンを騙し取られた
【対策】

  • どんな状況であれ,見知らぬ者から話しかけられたら警戒すること(特に日本語で話し掛けてくる場合)
  • 見知らぬ者に安易について行かないこと
  • 万が一,賭博の話をもちかけられたら,きっぱりと断り,その場から立ち去ること

カ その他の詐欺・ぼったくり

(ア) 知人から紹介された日本人に不動産賃貸手続の代行を依頼し,着手金等を支払ったが,連絡が取れなくなってしまった。
(イ) バイクタクシーから「市内観光に連れて行ってあげる」と声をかけられ,頼んだところ,最終的に法外な値段を要求された。

【対策】

  • 日本人であっても安易に信用せず,確実に身元を確認し,契約書を交わした上で,支払いをすること
  • バイクタクシーやシクロは極力利用しないこと
  • 流しのタクシーに乗る場合,大手会社のタクシーを選び,「ぼったくりタクシー防止カード」を活用する

(5)ひったくり対策

ア 最近の特徴(平成23年10~12月)
(ア)昨年10月から被害件数が急増。手口も凶悪化しており,負傷者が増加
(イ)ホーチミン市内中心部以外の郊外での発生も増加
(ウ)スマートフォン等の高額物品及び高額現金所持者が狙い打ちされている
(エ)男性及び在留邦人の被害割合が増加


イ ひったくり対策の基本的な考え方
(ア)一旦犯人側から狙われたら被害回避は困難(相手は複数台のバイクで凶器所持)
(イ)犯人側から見て期待値が低い(割りにあわない)存在になること
(ウ)高価な物を携行しない(見られない),警戒心を持つ(見せる)
(エ)日本人(お金持ちで警戒心低い)というだけで犯人側から狙われやすい存在であることを自覚する(女性,高齢者の方は特に)


ウ 外出前の具体的対策

(ア)極力手ぶらでの外出を心がける
(イ)近距離であってもタクシー(自動車)での移動(ドアツードア)を心がける
(ウ)特に女性は単独での外出を控え,夜間は目立つ高価な装飾品を身につけないよう心がける
(エ)バイクに荷物を載せて移動する場合,確実に荷物とバイクとを結束しておく
(オ)現金,カード類,旅券等の貴重品を一つのバッグ等にまとめて所持しない


エ 外出中の具体的対策

(ア) バッグ類を持って徒歩で移動する場合は,道路側に持たず,建物側を歩く(たすき掛けは引きずられて負傷する可能性が高く推奨しない)

(イ)

(ウ)

(エ)

(オ)

(カ)

スマートフォン等高額物品は極力人前で出さない

支払いの際等,財布の中を他人に見られないように

交差点での道路横断時,横断直後を特に警戒

ホテル,飲食店,銀行等の出入りは周囲を警戒してから(自分を注視する者がいないか)

時々振り返って背後を確認する習慣を

 

オ ひったくり被害に遭ってしまったら
(ア)抵抗しない,追いかけない(生命,身体の安全を第一に)
(イ)公安(警察)への届出
(ウ)携帯電話,カード,保険会社等への連絡
(エ)総領事館への届出

(6)ぼったくりタクシー対策
当館HP掲載の「ぼったくりタクシー防止カード」の活用方法等について説明しました。

 

2. 総領事館からのお知らせ等
当館担当領事が,テト(旧正月)期間中における注意事項等のお知らせ及びお願いについて,以下のとおり説明しました。


(1)テト(旧正月)期間中における注意事項

犯罪被害の注意喚起

 ベトナムでは,日越関係の強化に伴い,邦人旅行者・在留邦人数が増加し経済発展が続いているが,その一方で,貧富の格差も同時に広がっており,こうした事情等から,犯罪被害に遭う邦人は年々増加している。
 特に,テト(旧正月)期間中,金欲しさに犯罪が増える傾向にあり,実際,同期間中に被害に遭う邦人も年々多くなっていることから特に注意が必要。

出国ビザ及び旅券の厳重管理の注意喚起

 テト(旧正月)期間中に,当地で旅券の紛失・盗難に遭い,新たな旅券又は帰国のための渡航書の発給を受けるためには,警察の盗難証明書,戸籍謄本原本等が必要となる。また,ベトナム法令上,ベトナムの入国管理局にて,出国ビザ等を取得しなければ出国することができず,テト期間中はベトナムの関係機関も閉庁しているため,予定どおりに出国できないことになる。こうした事態を避けるためにも,旅券の取扱や保管は必ず厳重にすること。

(2)ロシア探査機の落下について
 ロシアの衛星探査機「フォボス・グルント」が1月15日~16日の期間中に,地上北緯51.4度~南緯51.4度の間の地域に落下するとの予測が公表されており,必要に応じて文部科学省のHPを参照していただきたい。


(3)ベトナム人とのトラブル防止
 一般的にベトナム人は,日本人に比べ自己愛が強く自分勝手で執念深いと言われており,雇用問題を巡って様々なトラブルが発生しており,特にベトナム人従業員の解雇にあたっては細心の注意が必要となる。また,平成23年上半期の来日外国人犯罪統計(警察庁)においては,国籍別総検挙件数でベトナム人は第3位に位置しており,人口比で考えた場合の犯罪敢行率は非常に高くその規範意識は決して高いとは言えない。従って,ベトナム人と良好な関係を保持してトラブルを回避するためは,日本人とは異なるこうした気質等を十分に理解しておく必要がある。


(4)総領事館からのお願い

在留届の提出

 現在当館管轄地域における在留邦人の数は昨年の統計では約5100人となっているが,実際には1万人以上の在留邦人がいるとみられる。
 新型感染症等における政府対策として,タミフル等の薬の手配は在留届の数に基づいて行われており,正確な数を把握することが重要。インターネットでの電子登録も可能であるため,周囲の人にも届出励行の呼びかけをお願いしたい。

注意喚起等の安全情報の広報協力依頼
 当館HP等において邦人向けに各種注意喚起等の安全情報を掲載しているが,より多くの邦人に周知するためにも,本会議の各担当者のホテル,店舗等に当館作成の資料を置かせていただけないか。安全情報の広報にご協力いただきたい。
 ~各担当者から了承をいただきました。

3.意見交換,質疑応答等
出席者から以下の意見交換,質疑等がなされました。

 

(1)報告(情報提供)

ア 各種安全対策について

(ア) 外出前の宿泊客に対して,スタッフがひったくり等の注意喚起の声かけを行うことで,防犯の意識付けを図っている。
(イ) チェックアウト後の宿泊客がひったくり被害に遭うケースが散見されることから,チェックアウト後に貴重品を預かるシステムを構築予定である。
(ウ) 各ツアーデスクにおいて邦人(顧客でない方も含め)に対して安全情報を提供している。そのおかげか今次年末年始中は被害がなかった。
(エ) 偽タクシーの見分け方やひったくりに遭いにくい歩き方等を写真入資料で顧客に案内している。
(オ) (フリープランの旅行者等に対しては,空港到着時,スタッフが独自のプレゼン資料を活用して注意喚起を行っている。
(カ) 旅行客に対して総領事館発行の「ぼったくりタクシー防止カード」を配付してる。
(キ) 従業員等に対する防犯指導に際しては,具体例を示して指導しなければ効果がないと考える。


イ 被害事例について

(ア) ひったくり被害に遭い,抵抗したために転倒し頭部に大怪我を負ってしまった方がいる。
(イ) 女性のマッサージ客引きについていってしまい,財布を盗まれる事案が依然発生している。
(ウ) 中東系の外国人数名が「日本のお金を見せてほしい」等と話しかけてきて,財布から現金を出したところ,背後にいた男にお金を盗まれるといった被害が発生している。
(エ) 比較的安全と言われてきた7区内(特に邦人女性がよく利用する店舗付近)においても,ひったくり被害が増加していると聞いている。
(オ) 出張者がベンタイン市場付近で乗った偽タクシーにぼったくられてしまった。

(2)要望
総領事館から警察当局に対する警戒強化,取締強化要請

 

【応答】

  ひったくり事件等については随時,発生日時・場所,被害状況等の情報を警察当局に提供するとともに取締強化を要請しており,実際に複数の犯行グループが検挙されている。今後も把握した被害情報等に基づいて引き続き要請していく。


(3)質疑

ア 鳥インフルエンザその他の感染症,心臓病等に関する情報及び対応方策について

【応答】 
 鳥インフルエンザ1月初旬にティエンザン省で罹患した鳥が発見され処分がなされたとの報道があったが,人に感染したとの情報はない。対策としては,家禽類に接触しないこと,手洗い,うがいの励行,病院への早めの相談等が挙げられる。
 その他に,現在ベトナムで流行している感染症としては,手足口病が挙げられるが,現在のところ,邦人の重篤,死亡事例はなく,罹患しても早めに治療すれば大事には至らない。
 心臓病については,昨年,高血圧で薬を常用している出張者が脳溢血や心筋梗塞で急死する案件が複数発生している。在留邦人を含め,健康管理に配意し,十分休養がとれるスケジュールを組みことが必要。発症後は1~2時間以内の迅速な処置が重要。

イ 男性の犯罪被害割合増加理由について

【応答】 
通常犯罪者は犯行対象を選定するにあたって,財産的価値及び犯行容易性(盗みやすさ)に着目している。最近は,犯罪者が,犯行容易性よりも,財産的価値を重視して対象を選定していると思われる。男性も決して油断しないこと。

ウ 迷子事案を認知した場合の通報先及びそのタイミングについて

【応答】 
誘拐の可能性も排除できないため,速やかに警察当局及び当館にも通報願いたい。