第7回邦人安全対策会議報告

 

7月2日,当館において第7回邦人安全対策会議を開催しましたので,その概要をお知らせします。皆様の安全のためにご活用いただければ幸甚です。

1 開催の挨拶
会議冒頭,当館首席領事が以下の開催の挨拶をしました。
今回の邦人安全対策会議は,1月に引き続き本年2回目の会合。忌憚のない意見交換・情報交換の場としたい。当地の全般的な治安情勢については,特段大きな問題はない。当面大きな反政府運動や,民族,宗教の違いに起因する暴動,テロ活動等の発生は,現時点では予見されてない。
引き続き反中国デモが散発的に発生してるが,治安当局は取り締まりを強化しており,現時点でデモが大衆運動化するような状況には至っていない。他方,在留邦人及び邦人旅行者が増加する中,邦人が窃盗やスリ,詐欺といった犯罪被害に遭うケースは依然として多く注意を要する。

2 最近の治安情勢及び各種被害対策について
当館担当領事が,最近の治安情勢及び各種被害対策について,以下の説明を行いました。
(1)テロ・暴動等について
公安省によれば,現在のところ,イスラム過激派によるテロや反政府組織等によるテロの情勢はないとの由。政治情勢も安定しており,テロ事件や暴動等の発生の可能性は低いものの,1月にはアルジェリアにおいて邦人が被害者となるイスラム過激派によるテロ事件が発生しており,情報収集,緊急連絡体制の整備等の備えは必要。特に在留届の提出徹底をお願いしたい。
(2)一般犯罪について
ホーチミン市公安によれば,ホーチミン市内では,本年に入って,殺人,強姦等の凶悪犯罪は減少しているものの,窃盗,詐欺等の刑法犯は増加傾向にあるとの由。特に最近は,青少年による犯罪,武器を使用した犯罪,麻薬犯罪の増加が顕著となっている。特に当局は,今後の景気低迷に伴う更なる犯罪増加を懸念しており,引き続き注意が必要。
(3)邦人被害援護件数(平成25年上半期)について
ア 計79件。昨年同期比で-15件と減少傾向にあるが,今後の夏休み,秋の観光シーズン等は被害増加が予想されるため警戒が必要。
イ 被害形態としては,ひったくりが35件と依然として全体の半数近くを占めている。
ウ いかさま賭博被害が大きく減少したが,スリ被害の増加が顕著。
(4)ひったくり被害
ア  平成25年上半期の特徴
・スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン所持者が狙われる(半数以上)
・ホテル、アパート、レストランの出入りを狙った待ち伏せが目立つ(半数以上)
・昼間時間帯の犯行が増加
・2区、7区等の市内中心部以外での犯行が増加
・タクシーの乗り降り、または、タクシー待ち等の際の隙を狙った犯行が増加
・屋内での犯行等、強引な手口による被害も発生2区,7区等の市内中心部以外での犯行が増加。タクシーの乗り降り,または,タクシー待ち等の際の隙を狙った犯行が増加等。
イ 最近の事例
日系レストラン前でタクシー待ちをしていた在留邦人の被害事例等を紹介。
ウ 対策
~犯行グループから狙われないために~
★徒歩で移動する場合は極力手ぶらで外出する
★携行品がある場合、タクシー等自動車で移動する
※車両乗降時は要注意。タクシーは自分で止めず店員等に呼んでもらう
★バッグ類を所持して徒歩で移動する場合は、常に犯行グループから観察されているという警戒心を持ちつつ、道路側に持たず、建物側を歩くこと
※たすき掛けは,怪我をするケースが多く勧められない。リュックタイプのものを両肩に前掛けにする等相当の警戒が必要。
★特に、ホテル、アパート、レストラン等の出入りの際は、狙われる可能性が高いことを認識し周囲を警戒する
★スマートフォンやタブレット端末は、極力人前で出さず、見られないようにすること(屋内であっても)
~被害を最小限に抑えるために~
★現金、カード類、旅券等の貴重品を一つのバッグ等にまとめて所持しない
★万が一被害に遭った場合、決して追いかけたり、抵抗したりしないこと
(5)スリ・置き引き被害
ア  平成25年上半期の特徴
・スリ被害件数の増加(昨年比1.5倍以上)
・スリ被害者の殆どは男性(約9割)
・ズボンのポケット在中の財布、スマートフォンが狙われる
・レストラン等店舗内での被害が増加
・デタム、ブイビエン、ファムグーラオ通り等のいわゆるバックパッカー街での被害が増加
イ 最近の事例
バックパッカー街や市場内での話しかけによるスリ被害等を紹介。
ウ 対策
★見知らぬ者が話しかけて(接触して)きた場合,警戒心を持つとともに他の仲間の動きにも注視する(殆どの場合、相手にしない方が無難)
※拒否してもつきまとう場合は、近くの店舗内に一時避難する
★レストラン等の店舗内でも油断することなく、貴重品の入ったカバン等は肌身から離さない。または、少なくとも常に自分の視界内に入れておく
★現金の引出し、両替、会計の後等は,誰かが自分を注視していないか確認する等、警戒心を持つ
★貴重品を含めた荷物多数を携行せざるを得ない空港やホテルロビー内においては、特に警戒が必要見知らぬ者が話しかけてきた場合警戒心を持つ。貴重品は必ず自分の視野内にいれておく等。
(6)いかさま賭博被害
ア 最近の傾向
昨年10月に当館支援によりフィリピン人犯行グループが摘発されて以降被害は発生していなかったものの,5月,ベンタイン市場付近において,「日本人ですか?私は日本で働いたことがある・・・」等の典型的な話しかけから被害に遭った女性旅行者が1名おり,今後も注意を要する。
イ 対策
★どんな理由であれ、見知らぬ者から話しかけられた場合、警戒心を持ち、安易に信用しない (殆どの場合、相手にしない方が無難)
★どんなに親切そうに見えても見知らぬ者に安易について行かない。賭博の話をもちかけられたら,きっぱりと断り,その場から立ち去る。
★必要最小限の現金のみを持ち歩き,クレジットカード等貴重品は安全な場所に保管しておく
(7)屋外での犯罪被害対策(まとめ)
☆タクシー等自動車を利用しドアツードアでの移動を心がける
(あらゆる犯罪者との接触機会を低減させることが可能)
☆手ぶらでの外出を心がけ,貴重品は人前で出さない
(犯行対象となる可能性を低減させることが可能)
☆見知らぬ者からの話しかけには応じない
(犯行対象となってしまった後でも、スリ及び各種詐欺被害が回避可能)
(8)客室・脱衣場ねらい被害
ア 最近の事例
ホテル客室,マッサージ店脱衣場のでの特異な被害事例を紹介。
イ 対策
★セーフティボックスがない(使用できない)ホテル等での宿泊は避ける
※セーフティボックスはフロントのものを利用した方がより安全
★ホテル等に貴重品を置いて外出する際には、セーフティボックスや施錠したトランク内等に保管しておく
★マッサージ等で脱衣場のロッカーを利用する際には、衣類等の保管にとどめ、貴重品の保管は避け、ポーチやビニール袋等を使用し自身で携行すること
(9)タクシーにかかるトラブル
ア 最近の事例
旅行者を狙った客引きタクシーやバイクタクシー利用者のトラブル事例を紹介。
イ 対策
★空港から利用する場合は,市内までのタクシーチケットを購入して利用する。  
★レセプションから呼んだタクシーまたは,ホテル玄関に待機しているタクシーを利用する
★流しのタクシーを拾う際は、大手会社を選び,「ぼったくりタクシー防止カード」(当館HP掲載)を活用する※置き忘れ等の際の事後調査にも有効 
★ベンタイン市場等の観光名所付近や空港等で客引きしているタクシーへの乗車は避ける
※大手会社のタクシーを模倣した偽タクシーや悪質ドライバーである可能性が高い 
★バイクタクシーやシクロは極力利用しない 
(10)被害に遭ってしまった場合の対応
ア 公安への届出を行い,被害(遺失)証明を取得するとともに捜査を依頼する。
イ 総領事館への届出を行い,各種手続に伴う支援,渡航書等の発給を受ける。(注意喚起等当館からの安全情報発信のためにも必要)
ウ カード,携帯電話,保険会社等への届出を行い,不正利用防止,被害回復を図る。

3 総領事館からのお知らせ等
当館担当領事が,当館からのお知らせとして,以下のとおり説明しました。(1)在外選挙について
在外公館投票の日時場所等(5日(金)~14日(日)総領事館2F,イベントホール)について説明。
(2)在留届の提出について
ア 在留届は,旅券法第16条により,義務付けられており,当国内において,事件や事故等の緊急事態が発生した際,当館よりの安否照会等の確認をする上で大変貴重なデータとなるため,3ヵ月以上滞在する方は提出をお願いしたい。
イ 1月のアルジェリアにおける武装集団によるテロ事件や5月,アメリカ・オクラホマ州で起きたハリケーン等の自然災害等,邦人を含む大勢の方が犠牲になる事案が発生しており,この様な緊急事態の際の安否確認,緊急連絡等のためにも社員の方々や周囲の方々にも在留届の届出励行の呼びかけをお願いしたい。
(3)旅券の有効期間について
ベトナムへの入国に際しては,原則3ヶ月以上の有効期間が必要で,それ以下の場合,入国を拒否される可能性もあり,不要なトラブルを避けるためにも,有効期間が3ヶ月以上の余裕のある状態で入国されることをお勧めする。特にこれから夏期休暇を取られると思われるが,同期間中にベトナムから出国される方は旅券の有効期間には注意願いたい。
(4)ベトナム国民に対する数次査証発給に関して
日本政府は,ベトナムとの間の一層の交流発展を目的として,7月1日より,ベトナム国民を対象とした短期滞在数次査証を発給することした。本件短期滞在数次査証の発給対象者,査証申請時の提出書類等の詳細については,当館HPを確認願いたい。

4 意見交換
出席者から以下の意見交換がなされました。
(1)在留邦人関係団体
ア VSIP等の工業団地内での資材等盗難事案は依然として発生している様である。
イ ブンタウ市内では,深夜時間帯に武器を所持した強盗団が出現しており,勤務交替時の被害を警戒し,シフトを変更した企業もあると聞いている。
ウ 毎年避難訓練及び緊急連絡訓練を実施している。また,職員等が集まる会議の席等で総領事館が発出している安全情報等について伝達している。
エ 女性が貴金属等を身につけて外出しなければならない場合等は,スカーフ等で隠すよう指導している。
オ 最近の被害ではスーパーマーケット内のでのスリ被害が多いと感じている。
(2)政府関係機関
ア 5月に視察で来越した方が紛失した携帯電話を探している最中に旅券,財布等をひったくり被害に遭うという事案が発生し総領事館のお世話になった。事前に注意はしていたものの,意識を変えることは難しいと感じている。
イ 年に2回ハノイ事務所と合同の安全対策会議を実施し注意喚起ており,今年は職員,調査団等の被害は発生していない。
(3)航空業界
5月末に預け荷物が盗難に遭う事案が発生している。荷物をピックアップするターンテーブルで盗まれたことが判明しており,現在,スタッフを配置し警戒している。
(4)旅行業界
ア 旅行者の被害は全体的に減少しており,特にひったくり被害は大幅に減少している。しかし,スリ被害は増加している。
イ 空港到着後のタクシー乗り場に至る途中で客引きを行っているタクシーがおり,顧客への注意喚起を行っている。
ウ 大手タクシー会社のVINASUNでぼったくり被害に遭った女性がいたが,幸い車両番号を記憶していて本社に通報したところ,返金を受けることができたという事案があった。大手タクシーでも悪質なドライバーはいるようである。
エ ホテル内の内線電話を用い,ホテル滞在中の邦人を片言の日本語でロビーに呼出し,金を借りようとした不審な女性が把握されており,今後も類似手口による犯行に注意する必要があると考えている。
(5)ホテル業界
ア ホテルロビー等に総領事館が発出している注意喚起等の安全情報を掲示している。
イ バッグ類を所持して外出する顧客には,スタッフから,ひったくりやスリ被害に関する注意喚起を行っている。
ウ 本年に入ってひったくり被害に遭う顧客は減少しており、各種注意喚起が浸透してきていると感じている。
(6)フリーペーパー業界
総領事館の発出する注意喚起等を掲載するとともに,越人被害にかかるローカルニュースであっても,邦人の生活圏に近い場所で発生した事件については翻訳し掲載している。
(7)医療業界
ア ひったくり被害に起因する患者の数は減っているが,バッグ等をたすき掛けにしていたために,そのまま転倒して引きずられて広範囲にわたる擦過傷を負うといった重傷患者もおり,たすき掛けは危険であると感じている。
イ バイク同乗,運転中に事故に遭う人が増えている。飲酒運転中に転倒し負傷したケースもある。また保険に加入していない人が多いと感じており,万が一の場合に備え,加入をお勧めしたい。