第9回邦人安全対策会議報告

 

2月4日,当館において第9回邦人安全対策会議を開催しましたので,その概要をお知らせします。皆様の安全のためにご活用いただければ幸甚です。

 

1 開催の挨拶
会議冒頭,当館首席領事が以下の開催の挨拶をしました。
シリアにおける邦人人質殺害事件の発生に伴い,当館では日本人学校との連携強化を図り,外務事務所及び公安省に対しては,在留邦人,日本人学校及び旅行者の安全確保の強化について依頼している。
テト(旧正月)前後には,一般的に犯罪が増加傾向にあることから,ひったくりやスリ,置引きなどには十分注意して頂きたい。
また,この休暇を利用して海外旅行に行かれる場合には,外務省海外安全ホームページ等を利用し,現地情勢を十分に把握した上での渡航をお勧めする。


2 最近の治安情勢及び各種被害対策について
当館担当領事が,最近の治安情勢及び各種被害対策について,以下の説明を行いました。
(1)シリアにおける邦人人質殺害事件を受けて
この事件は各国のメディアでも多く取り上げられ,国際的にも注目を集めていること,世界各地でイスラム国(ISIL)に賛同しているとみられる者がテロを起こしていること,ISIL関係者と思われる者より日本国民の安全を脅かすことを示す発言がなされていることなど,現在の情勢を十分認識し,誘拐,脅迫,テロ等の不測の事態に巻き込まれないよう,十分な注意が必要である。そのためにも,海外に渡航する場合には,渡航先の治安情勢を外務省海外安全ホームページや現地日本大使館・総領事館のホームページ,出張先企業,旅行業者等から入手することが必要である。
(2)ベトナムにおけるイスラム過激派の現状
公安当局によれば,現時点ではイスラム過激派の存在は確認されていない。
当地においては,徹底した出入国管理がなされており,国内の警戒も強化していることから,現在のところテロの脅威は低いと考えられる。
(3)一般犯罪について
ホーチミン市公安によれば,ホーチミン市内では,本年に入って,殺人,強姦等の凶悪犯罪は減少しているものの,ひったくりや侵入盗の刑法犯は増加傾向にあるとの由。ただ,女性や子供の人身売買目的誘拐が組織化されてきていることが憂慮されており,注意が必要。
(4)邦人被害援護件数(平成26年)について
ア 計100件。昨年比で-49件と減少傾向にあるが,あくまで当館への届け出ベースの数であり実数ではない。
イ 被害形態としては,ひったくりが44件と依然として全体の半数近くを占めている。
ウ 観光地やバックパッカー街での被害も多いが,2区,7区等中心部以外での被害が増加傾向にある。
(5)ひったくり被害
ア 最近の事例
午前1時半頃,自宅前でひったくりにあった在留邦人の事例等を紹介。
イ 対策
★徒歩で移動する場合は極力手ぶらで外出する。
※必要最低限の所持品
★携行品がある場合、タクシー等自動車で移動する。
★車両乗降時は要注意。タクシーは自分で止めず店員等に呼んでもらう。
★バッグ類を所持して徒歩で移動する場合は、常に犯行グループから観察されているという警戒心を持ちつつ、道路側に持たず、建物側を歩くこと。
★バッグのたすき掛けは,怪我をするケースが多く勧められない。リュックタイプのものを両肩に前掛けにする等相当の警戒が必要。
★特に、ホテル、アパート、レストラン等の出入りの際は、狙われる可能性が高いことを認識し周囲を警戒する。
★スマートフォンやタブレット端末は、極力人前で出さず、見られないようにすること(屋内であっても)。
※スマートフォンやタブレット端末を見ていると注意が散漫になり,自分が狙われていることにも気付かない場合が多い。
(6)スリ・置き引き被害
ア 最近の事例
男性が狙われやすい抱き付きスリ被害を紹介。
イ 対策
★見知らぬ者が話しかけて(接触して)きた場合,警戒心を持つとともに他の仲間の動きにも注視する(殆どの場合、相手にしない方が無難)。
※拒否してもつきまとう場合は、近くの店舗内に一時避難する。
★レストラン等の店舗内でも油断することなく、貴重品の入ったカバン等は肌身から離さない。または、少なくとも常に自分の視界内に入れておく。
★現金の引出し、両替、会計の後等は,誰かが自分を注視していないか確認する等、警戒心を持つ。
(7)ブラックマネー詐欺被害
ア 事例
アフリカ某国の政府高官等を装った外国人(黒人)から,政情不安などの理由で海外に億単位の金を持ち出す際に,薬品で100米ドル紙幣を黒くしたが,薬品に浸すと元の100ドル紙幣に戻ると説明され,目の前で黒い紙が100ドル札に戻る様子を見せられた。カバンの中の大量の黒い紙が100ドル紙幣と信じ込ませ,すべてを100ドル札に戻すには大量の薬品が必要であり,その薬品の購入資金を貸して欲しい,札が戻れば謝礼をすると言われ,多額の現金を複数回に分け渡してしまった。
イ 対策
★どんな理由であれ、見知らぬ者から話しかけられた場合、警戒心を持ち、安易に信用しない(殆どの場合、相手にしない方が無難)。
★どんなに親切そうに見えても見知らぬ者に安易について行かない。
★必要最小限の現金のみを持ち歩き,クレジットカード等貴重品は安全な場所に保管しておく。
★借金,投資等の申し出を受けた際には,旅券等の写真付身分証明書の提示を求め,相手の身分事項を確認すると供に,弁護士等の立ち会いのもとで契約書にサインするなどし,口約束などで安易に申し出を受けない。
(8)屋外での犯罪被害対策(まとめ)
☆タクシー等自動車を利用しドアツードアでの移動を心がける。
※あらゆる犯罪者との接触機会を低減させることが可能。
☆手ぶらでの外出を心がけ,貴重品は人前で出さない。
※犯行対象となる可能性を低減させることが可能。
☆見知らぬ者からの話しかけには応じない。
※犯行対象となってしまった後でも、スリ及び各種詐欺被害が回避可能。
(9)侵入窃盗被害
ア 最近の事例
自宅アパートでの忍び込み(家人が就寝中に侵入し金品等を盗むこと)の被害事例を紹介。
イ 対策
★ドアロックとチェーンロックの両方を活用する。
★ドアに錠を増設する。。
★ホテル等に貴重品を置いて外出する際には,セーフティボックスや施錠したトランク内等に保管しておく。
※フロントに設置されているセーフティボックスを利用した方がより安全。
★長期間アパートを不在にする場合には,貴重品や高額現金を部屋に置いておかない。
※部屋のセーフティボックスを過信しないこと。
(10)タクシーにかかるトラブル
ア 最近の事例
ベンタン市場周辺で待機しているタクシーに乗車した際の事例を紹介。
イ 対策
★レセプションから呼んだタクシーまたは,ホテル玄関に待機しているタクシーを利用する。
★流しのタクシーを拾う際は、大手会社を選び,「ぼったくりタクシー防止カード」(当館HP掲載)等を活用し,車両特定に必要な情報を控えておく。
※置き忘れ等の際の事後調査にも有効。
★ベンタイン市場等の観光名所付近で客引きしているタクシーへの乗車は避ける。
※大手会社のタクシーを模倣した偽タクシーの可能性が高い。
★バイクタクシーやシクロは極力利用しない。 
(11)被害に遭ってしまった場合の対応
ア 公安への届出を行い,被害(遺失)証明を取得するとともに捜査を依頼する。
イ 総領事館への届出を行い,各種手続に伴う支援,渡航書等の発給を受ける。(注意喚起等当館からの安全情報発信のためにも必要)
ウ カード,携帯電話,保険会社等への届出を行い,不正利用防止,被害回復を図る。

 

3 総領事館からのお知らせ等
当館担当領事が,当館からのお知らせとして,以下のとおり説明しました。

(1)在留届の提出について
ア 在留届は,旅券法第16条により,義務付けられており,当国内において,事件や事故等の緊急事態が発生した際,当館よりの安否照会等の確認をする上で大変貴重なデータとなるため,3ヵ月以上滞在する方は提出をお願いしたい。
イ 昨年5月に反中の大規模デモが発生した際にも,緊急一斉メールを当館から送信した。この様な緊急事態の際の安否確認,緊急連絡等のためにも社員の方々や周囲の方々にも在留届の届出励行の呼びかけをお願いしたい。
(2)「たびレジ」登録について
外務省は,昨年7月1日より,海外旅行者向けに「たびレジ」を開始している。たびレジは,海外旅行や海外出張される方が,旅行日程・滞在先・連絡先などを登録すると,滞在先の最新の渡航情報や緊急事態発生時の連絡メール,また,いざいとう時の緊急連絡が受け取れるシステムであることから,ぜひ利用して頂けるよう呼びかけをお願いしたい。
在留届とたびレジの登録に関しては,当館ホームページにもリンクがあり,簡単な操作で届出,登録ができるので利用頂きたい。

 

4 意見交換
出席者から以下の意見交換がなされました。
(1)在留邦人関係団体
ア 領事館近くの飲食店前で,タクシーを降車した際にひったくり未遂にあった邦人女性がいる。犯人が女性のハンドバッグを掴み損ねたが,もしハンドバッグを掴まれていたら,子供と手を繋いでいたことから,転倒すれば子供も大けがをする可能性があった。
イ 邦人女性のひったくりやひったくり未遂をよく耳にするが,領事館への届出を行っていないケースもあると思われる。
ウ 携帯電話をタクシー内に置き忘れた邦人は,もう戻ってこないだろうと諦めていたが,タクシー運転手が届けてくれたというすばらしい事例があった。
(2)政府関係機関
今年は職員,調査団等の犯罪被害や交通事故は発生していない。
(3)日本人学校
総領事館との連携を密にし,警備会社への不審者侵入対策強化を依頼した。
また,周囲の鉄柵の補修を行う予定であり,利用時以外は出入り口門を閉ざしておくよう指示,また,児童のバス乗降に関しては,学校敷地内で行うよう指導した。
(4)航空業界
ア 社員の送迎時に,当地の治安情勢について伝達している。
イ 当地へ到着するお客様に対し,どのように注意喚起していくかが課題である。
(5)旅行業界
ア 旅行者の被害場所が1区から3区へと移動している。
イ 数人でコンビニに買い物に行った旅行者のうち1人が,コンビニの外でたばこを吸っていた際,ベトナム人数人に路地に引き込まれ,ナイフで脅されスマートフォンを盗まれた事件が発生した。
ウ 大手タクシーによるぼったくり被害もあり,大手タクシー会社でも悪質なドライバーはいるようである。
エ ひったくり,ぼったくりタクシー,ぼったくりバイクタクシーについてビデオを作成し,空港からホテルへの送迎時にバスの中で上映し観光客に注意喚起を行っている。
オ 広報媒体を利用するなどして,ひったくりやスリ,ぼったくりタクシーなどの犯罪に遭わないように注意喚起をして頂きたい。
(6)ホテル業界
ア 男性客が女性(または女装した男性)に突然,股間を握られ,驚いている隙に財布を盗まれる事件があった。
イ 年末・年始にひったくり等の被害に遭われたお客様(邦人含む)は,1日2~3組であり,非常に多いと感じた。
ウ タクシーの法外な料金請求で,運転手が客の目の前に値段を書いた新聞を突きつけ,値段交渉をしているように見せかけ,新聞の下で乗客のハンドバッグから貴重品を抜き取る手口に関しては,邦人旅行者だけではなく,西洋人等も被害に遭っていた。