7月13日,当館において第3回邦人安全対策会議を開催しましたので,その概要をお知らせします。皆様の安全のためにご活用いただければ幸甚です。
1 開催の挨拶
会議冒頭,当館首席領事が以下の開催の挨拶をしました。
本会議も3回目を迎え定例化して参りました。お互いに顔を合わせて情報交換するというネットワークは安全対策において非常に有意義であると考えます。当地は周辺国に比べ比較的治安は良い方でありますが,邦人が事件に巻き込まれるケースは決して少なくありません。また,今後,ベトナムをとりまく関係国の政治・経済・金融状態の変化がベトナムの治安情勢にも大きく影響することが予測され,そういった観点からも皆様の幅広い知見を本会議を通して邦人の安全対策に還元していただきたいと思います。
2 ホーチミンにおけるの邦人犯罪被害等の傾向と対策
当館警備担当領事が,※別添の資料(パワーポイント)を使用しつつ,当地における邦人犯罪被害の傾向及び対策等について以下の説明を行いました。
(1)邦人の犯罪被害状況(概要)
ホーチミンでの被害傾向は,「窃盗」と「詐欺」の大きく2つに分けられるのが特徴。 最近(2011年4月~6月)の被害報告総数は46件と増加傾向。
内訳は,バイクひったくりといかさま賭博が最も多い。
犯罪被害が頻発している場所はベンタイン市場内及びその周辺が最も多い。
被害場所の形態としては,路上が圧倒的に多く,次いでタクシー内での被害が多い。
被害者は,20台,30台の若年層,観光等の短期滞在者が多い。
(2)犯罪形態別の傾向と対策
ア バイクひったくり
【傾向】
最も多い犯罪形態。麻薬中毒者による犯行のため手口は凶暴化,負傷する邦人もいる。
被害場所の傾向しては,特にトンドックタン通りでの被害が突出している。
被害時間の傾向としては,帰宅時の午後5時頃から午後7時の間に最も多くなっている。
被害者の傾向しては,短期滞在者,特に女性の被害が圧倒的に多い。
旅行者は,宿泊しているホテルや観光名所の出入りを待ち伏せされている。
【対策】
- ホテルや観光名所等の出入りの際は,周囲を警戒する(特に夕方~夜時間帯)
- 女性旅行者は狙われていることを自覚し,高価な装飾品を身につけないこと
- 極力手ぶらでの移動を心がけ, 道路を歩く場合,バッグを道路側にかけない 等
イ いかさま賭博
【傾向】
自称フィリピン人の女性等が親しげに話しかけ,言葉巧みに食事に誘う等自宅に招き,そこで「いかさま賭博」をもちちかけ,多額の現金を賭けさせ,賭け金をだまし取るもの。
ターゲットは,学生又は女性の一人旅であり,特に若年層の被害が多い。
旅行者がよく利用するホテル付近や,デタム通り等のいわゆるバックパッカー街で発生。
【対策】
- どんなに親切,親しげであっても見知らぬ者の言葉を安易に信用しないこと
- また,見知らぬ者に安易について行かないこと
- 万が一,賭博の話をもちかけられたら,きっぱりと断り,その場から立ち去る 等
ウ 置き引き・スリ
【傾向】
置き引きは,タンソンニャット空港を起点(終点)とするタクシー内での被害が殆ど スリは,デタム通り等のいわゆるバックパッカー街及びベンタイン市場で多発。
【対策】
- カバン等は肌身から離さない。または自分の視界内にいれておくこと
- 車内(タクシー)にカバン等を置いたまま離れないこと
- 外出時,貴重品を持ち歩かない。携行していることを悟られないように配意する 等
エ ぼったくりタクシーによる被害
【傾向】
法外な金額を支払うまで車内に閉じこめられ,暴行・恐喝に発展することもある。
タンソンニャット空港及びベンタイン市場で客待ちしているタクシーによる犯行。
【対策】
- 空港ではタクシーチケットを利用し,大手会社以外の流しのタクシーは避けること
- メーターが急増したり,違う方向へ走り出したら,停車を求め,直ちに降りること
- 被害にあった場合,身の安全を第一に考えて対処し,車両番号等を記録すること 等
オ 在留邦人の被害例(侵入窃盗,詐欺,脅迫等)
警備員等の関与の疑いのある空き巣の事例が多く,別途鍵を設置する等の措置が必要。
会社設立に係る費用を騙し取る或いは横領するといった事案が発生しており,可能な限り信用のおける大手のコンサルタント会社或いは弁護士事務所を利用する必要がある。
脅迫事例の被害は,ベトナム人従業員の解雇に起因するものが多く,顧問弁護士等を通じて行う等の工夫が必要。また,日頃から良好な人間関係の構築に配意する必要がある。
カ 空港でのトラブル
タンソンニャット空港に到着後,税関職員から携行週刊誌類の女性のグラビア写真等が「わいせつ図書」にあたるとして罰金を支払いを命じられる例が増加している。当地では,わいせつの基準が日本より厳しく,携行する雑誌類は慎重に選定する必要がある。
(3)犯罪被害に遭った場合の対処要領 (負傷者のいない窃盗被害等の場合)
ア 警察への届出
可能な限り証拠とともに警察への届出を行いうこと。ただし,日本の警察と異なり当地警察は,すみやかに(概ね48時間以内),管轄警察署へ被害者本人が,ベトナム語の通訳を用意して届け出なければ受理してくれない。
イ カード,保険,携帯電話会社等への届出
被害品によっては,サービス停止措置(不正使用の防止), 再発行手続きを行うべきであり,被害回復のための保険関係手続き(必要書類等の確認)も確認すべき。
ウ 総領事館への届出
旅券又は帰国のための渡航書の発給のほか,上記届出に際しての関係当局への照会・申し入れ,関係連絡先の教示等の側面支援を行う。
3 総領事館からのお知らせ
当館から出国ビザ発給手続きの変更,輸入規制に伴う郵便物のトラブル等について以下の説明を行いました。
(1)出国ビザ発給手続きの変更
本年2月頃から,ホーチミン入管は,ビザ無しで入国した旅券紛失者等に対する出国ビザについて,突然,空港での出国ビザを発給しなくなった。このため,当館と同入管で協議・交渉した結果,
ア
イ
|
平日は,これまで同様,渡航書及び当館公文書の原本があれば空港で出国ビザを発給する
週末及び祝休日の間については,いわゆる人道案件を除き,空港では出国ビザが発給されず,月曜日等のベトナム入管開庁日まで待たなければならない |
こととなったのでご注意願いたい。
(2)輸入規制に伴う郵便物のトラブル
6月1日からベトナム当局は,従来の品に加え,酒類,化粧品,携帯電話に関する輸入規制の規定を追加・制定したが,ベトナム郵便局(EMS)側は各国に対して同内容を通知していなかったため,各国郵便局が追加規制品を受け付け,ベトナム税関でストップし,受け取れないというトラブルが多発している。今後は,同規制に沿った手続きによらなければ輸入できないので注意が必要である。
(3)オンライン安否確認システム
今月初旬から海外における大規模緊急事態が発生した場合,家族や親族等が被害に遭っていないかどうかの照会を外務省ホームページ上で確認することができるようになる。
(4)南シナ海領有権問題に伴う対中国デモの情勢
先月ホーチミン市内でもデモが行われ,当館もその情勢を注視している。現在のところ,過激化,暴動に発展するといった情勢にないが,中国の動向次第で情勢も変わる可能性もあるので,過激なデモが行われるといった情勢になれば当館から速やかにお知らせする。
4 質疑応答,意見交換等
出席者から以下の質疑及び情報提供がなされました。
(1)質疑応答
(質疑)
EMSで送った酒が受け取れないという相談を受けているがどうすればよいか
(応答)
先程の説明の通り,6月から酒類も規制の対象となったため,規定された方法以外の輸入方法では受け取ることはできない。EMSに照会して返送手続きを進めるしかない。
(質疑)
財布を見せてと言われた後催眠術にかけられ,気づいたらお金をとられていたという相談を受けたがそのような事件を把握しているか
(応答)
当館ではそういった手口での被害を把握していないが,ヨーロッパ等でよくある偽警官による一種のトリックを使った手口だと考えられる。見知らぬ者に安易に財布等大事な物を渡さないよう注意すべき。
(2)情報提供
ホテル業界担当者から,自称サウジアラビア人から「日本に行くので日本円が見たい」等と声をかけられ,部屋に侵入されそうになったという事案発生の報告がなされました。
※ 別添資料「ホーチミンにおける邦人犯罪被害等の傾向と対策」(PDF),「安全対策チェックリスト」(PDF)もご参照ください。 |