ベトナム南部ロンアン省の魅力―メコンデルタ地域とホーチミン市を繋ぐ要衝―
令和3年10月22日
在ホーチミン日本国総領事館が管轄するベトナム南部(フーイエン省、ダクラク省以南)の魅力については、先般7月にご紹介したとおり(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/local/page22_003659.html)、特色豊かな地方省・市が存在します。日本ではあまり名前が知られておらず、なじみの薄いベトナム南部地方省・市においても日本企業に対する進出期待は高く、本稿では、皆様に南部地方省市のことを知っていただくという視点で、当館の活動も交えながら、まずはホーチミン市南西に隣接するロンアン(Long An)省をご紹介します。
ロンアン省においても新型コロナウイルス感染拡大のため今年の7月以降、社会隔離措置が導入された結果、鉱工業生産指数も前年比2桁の減少を記録するなどコロナ禍の影響を受けておりますが、現在はコロナ感染の押さえ込みを図りつつ社会経済活動の再開に向けて取り組んでいます。
1 メコンデルタ地域とホーチミン市を結ぶ玄関口・メコンデルタ経済の雄
ロンアン省はホーチミン市の南西に隣接しており、メコンデルタ地域の玄関口に位置しています。ホーチミン市中心部からロンアン省の省都であるタンアン市までは距離にして約50km、国道1号線を車で約1時間30分ほどです。
人口は約170万人、人口増加率は12.8%とホーチミン市の5.1%を大きく上回っており、ホーチミン市都市圏への流入人口の受け皿として住居の整備も進められています。同省のGRDPは58億米ドル(2020年)であり、また1人あたり年間所得は約3,400ドルと耐久消費財の普及が進む目安とされる3,000米ドルを超えています。ベトナム商工会議所(VCCI)がベトナムで活動する民間企業(外資含む)の声をもとに作成している省・市別の競争力指数ランキング(2020年)では、63省・市のなかで第3位とビジネス界からもその投資環境が評価されています。
2 ロンアン省の産業の特徴
ロンアン省の経済構造は、農林水産業が2割弱、製造・建設業が5割弱、サービス業その他が3割強といった構成になっています。実際に同省に足を運んでみますと、青々とした水田・農業地帯が広がる中に工業団地が立地している風景が特徴です(図3)。
(1) 豊富な農業資源
ベトナムで生産される農水産物の約5割がメコンデルタ地域で生産され、ロンアン省はそれらの農水産物を、一大消費地であり輸出地点でもあるホーチミン市に届ける役割を担っています。全国2位の生産量を誇るドラゴンフルーツ、全国第4位の米をはじめ、サトウキビ、パイナップルなど農産品の一大生産地でもあります。今後、環状線道路や高速道路の建設が進み物流が改善すれば、これら農業生産物の競争力もよりいっそう高まることが予想されます。
(2)メコンデルタ地域第1位の工業団地数
ロンアン省には35の工業団地及び62の産業用地があり、日系企業の進出数は132社とメコンデルタ地域のなかでは進出日系企業数が最も多い省です。進出日系企業の業種も飲料製造、食品加工、木材加工・製造、家畜飼料製造、電子・精密機器製造など多岐にわたっています。また、工業団地の中には日本語名称のものもあり、それらには日系企業が多数入居しています。今年の1月に同省幹部と当館及び当地の日系経済団体との意見交換を行った際には、ドゥック同省共産党書記より同省において新たに建設を予定している4つの工業団地について紹介がありました。その2週間後には同省人民委員会が日本関係者(ホーチミン日本商工会議所、JETROホーチミン事務所、JICAホーチミン出張所、当館)を招待する形で、建設途上にあるこれらの工業団地及びロンアン国際港の視察ツアーが開催されるなど、日系企業誘致に関する同省の強い期待が感じられました。積載量3万トン級の船舶が可能なロンアン国際港は、約20km下降すれば沖へアクセスできるなど立地に優れております。現在、2025年までに計9埠頭の建設を計画しており、同省の物流の増大に貢献していくことが期待されます。
3 ロンアン省の持つ優位性・将来の展望
前述のとおり、ベトナム第一の都市ホーチミン市に隣接するロンアン省はメコンデルタ地域とホーチミン市をつなぐ要衝であり、その交通網及び今後さらに向上が見込まれる交通インフラの点に同省の優位性があると言われています。
同省はホーチミン市へのアクセスが良く、ホーチミン市のタンソニャット国際空港(25km)、同市の主要な港のであるカットライ港(30km)等へのアクセスの便利さ
立地条件が投資・工場誘致を考える上で大きなメリットになっています。また、既存の道路網では、ホーチミン市とメコンデルタ地域の中核都市である南部のカントー市を結ぶ高速道路や国道1号線、50号線などのホーチミン市に繋がる幹線道路があり、また、今後、現在建設中のベンルック(ロンアン省)=ロンタイン(ドンナイ省)高速道路が開通することで、ベトナム最大規模の空港と見込まれるロンタイン国際空港(2025年開港を目指し建設中)へのアクセスが確保されるとともに、ビエンホア(ドンナイ)=ブンタウ(バーリア=ブンタウ省)間を介することでベトナム有数の外国貨物取扱港であるカイメップ=チーバイ港へのアクセスが格段に向上します。
またロンアン国際港に加え、同省は約2500kmにも及ぶ水上交通網(内陸水路)が
張り巡らされており、ロンアン省とホーチミン市やその他メコンデルタ経済圏を繋ぐ水上物流ルートが形成され数百トンの船舶による物流輸送も行われています。
このような便利な交通インフラ等に支えられ、現在同省には、特にホーチミン市に隣接する地域には多くの投資家が関心を寄せていると言われます。同時に、ロンアン省側でもこの交通網・輸送インフラを活用し、今後省内に複数の物流センターの設置を計画しているとの報道もみられます。
なお、同省に進出している日系企業の中からも、同省に所在する工業団地がホーチミン市中心部から車で1時間ほどの至近の距離にあるほか、空港や港が近いこと等の地理的優位性のメリットを進出の理由の1つとして指摘する声も聞かれます。
4 日本とのつながり
(1)これまで日本からロンアン省への累積投資件数は160件、総額6億米ドルの投資が行われてきているほか、貿易総額は6.8億米ドル(2020年)です。前述の通り、同省では日本からの投資誘致に積極的に取り組んでいます。また、これまでにも、同省から、人民委員長又は副人民委員長を筆頭とするミッションが投資誘致等を目的とし度々訪日して、同省の魅力をアピールしています。
(2)また、ロンアン省は愛知県、茨城県、兵庫県、和歌山県と交流があり、特に茨城県とは「人材送出・受け入れに関する覚書(2019年)」、兵庫県とは「経済交流共同声明(2017年)」をそれぞれ締結しています。ドゥック同省共産党書記をはじめ、訪日経験がある省政府幹部も多く、1月の意見交換ではさらに日本との人材交流を進めていきたい旨、発言がありました。
ロンアン省窓口:同省外務局国際協力室(e-mail:thinhlq@longan.gov.vn ※英語可)
※本文中の統計はベトナム統計総局(GSO)及びベトナム商工会議所(VCCI)が公開している統計を参照しております。
ロンアン省においても新型コロナウイルス感染拡大のため今年の7月以降、社会隔離措置が導入された結果、鉱工業生産指数も前年比2桁の減少を記録するなどコロナ禍の影響を受けておりますが、現在はコロナ感染の押さえ込みを図りつつ社会経済活動の再開に向けて取り組んでいます。
1 メコンデルタ地域とホーチミン市を結ぶ玄関口・メコンデルタ経済の雄
ロンアン省はホーチミン市の南西に隣接しており、メコンデルタ地域の玄関口に位置しています。ホーチミン市中心部からロンアン省の省都であるタンアン市までは距離にして約50km、国道1号線を車で約1時間30分ほどです。
人口は約170万人、人口増加率は12.8%とホーチミン市の5.1%を大きく上回っており、ホーチミン市都市圏への流入人口の受け皿として住居の整備も進められています。同省のGRDPは58億米ドル(2020年)であり、また1人あたり年間所得は約3,400ドルと耐久消費財の普及が進む目安とされる3,000米ドルを超えています。ベトナム商工会議所(VCCI)がベトナムで活動する民間企業(外資含む)の声をもとに作成している省・市別の競争力指数ランキング(2020年)では、63省・市のなかで第3位とビジネス界からもその投資環境が評価されています。
2 ロンアン省の産業の特徴
ロンアン省の経済構造は、農林水産業が2割弱、製造・建設業が5割弱、サービス業その他が3割強といった構成になっています。実際に同省に足を運んでみますと、青々とした水田・農業地帯が広がる中に工業団地が立地している風景が特徴です(図3)。
(1) 豊富な農業資源
ベトナムで生産される農水産物の約5割がメコンデルタ地域で生産され、ロンアン省はそれらの農水産物を、一大消費地であり輸出地点でもあるホーチミン市に届ける役割を担っています。全国2位の生産量を誇るドラゴンフルーツ、全国第4位の米をはじめ、サトウキビ、パイナップルなど農産品の一大生産地でもあります。今後、環状線道路や高速道路の建設が進み物流が改善すれば、これら農業生産物の競争力もよりいっそう高まることが予想されます。
(2)メコンデルタ地域第1位の工業団地数
ロンアン省には35の工業団地及び62の産業用地があり、日系企業の進出数は132社とメコンデルタ地域のなかでは進出日系企業数が最も多い省です。進出日系企業の業種も飲料製造、食品加工、木材加工・製造、家畜飼料製造、電子・精密機器製造など多岐にわたっています。また、工業団地の中には日本語名称のものもあり、それらには日系企業が多数入居しています。今年の1月に同省幹部と当館及び当地の日系経済団体との意見交換を行った際には、ドゥック同省共産党書記より同省において新たに建設を予定している4つの工業団地について紹介がありました。その2週間後には同省人民委員会が日本関係者(ホーチミン日本商工会議所、JETROホーチミン事務所、JICAホーチミン出張所、当館)を招待する形で、建設途上にあるこれらの工業団地及びロンアン国際港の視察ツアーが開催されるなど、日系企業誘致に関する同省の強い期待が感じられました。積載量3万トン級の船舶が可能なロンアン国際港は、約20km下降すれば沖へアクセスできるなど立地に優れております。現在、2025年までに計9埠頭の建設を計画しており、同省の物流の増大に貢献していくことが期待されます。
3 ロンアン省の持つ優位性・将来の展望
前述のとおり、ベトナム第一の都市ホーチミン市に隣接するロンアン省はメコンデルタ地域とホーチミン市をつなぐ要衝であり、その交通網及び今後さらに向上が見込まれる交通インフラの点に同省の優位性があると言われています。
同省はホーチミン市へのアクセスが良く、ホーチミン市のタンソニャット国際空港(25km)、同市の主要な港のであるカットライ港(30km)等へのアクセスの便利さ
立地条件が投資・工場誘致を考える上で大きなメリットになっています。また、既存の道路網では、ホーチミン市とメコンデルタ地域の中核都市である南部のカントー市を結ぶ高速道路や国道1号線、50号線などのホーチミン市に繋がる幹線道路があり、また、今後、現在建設中のベンルック(ロンアン省)=ロンタイン(ドンナイ省)高速道路が開通することで、ベトナム最大規模の空港と見込まれるロンタイン国際空港(2025年開港を目指し建設中)へのアクセスが確保されるとともに、ビエンホア(ドンナイ)=ブンタウ(バーリア=ブンタウ省)間を介することでベトナム有数の外国貨物取扱港であるカイメップ=チーバイ港へのアクセスが格段に向上します。
またロンアン国際港に加え、同省は約2500kmにも及ぶ水上交通網(内陸水路)が
張り巡らされており、ロンアン省とホーチミン市やその他メコンデルタ経済圏を繋ぐ水上物流ルートが形成され数百トンの船舶による物流輸送も行われています。
このような便利な交通インフラ等に支えられ、現在同省には、特にホーチミン市に隣接する地域には多くの投資家が関心を寄せていると言われます。同時に、ロンアン省側でもこの交通網・輸送インフラを活用し、今後省内に複数の物流センターの設置を計画しているとの報道もみられます。
なお、同省に進出している日系企業の中からも、同省に所在する工業団地がホーチミン市中心部から車で1時間ほどの至近の距離にあるほか、空港や港が近いこと等の地理的優位性のメリットを進出の理由の1つとして指摘する声も聞かれます。
4 日本とのつながり
(1)これまで日本からロンアン省への累積投資件数は160件、総額6億米ドルの投資が行われてきているほか、貿易総額は6.8億米ドル(2020年)です。前述の通り、同省では日本からの投資誘致に積極的に取り組んでいます。また、これまでにも、同省から、人民委員長又は副人民委員長を筆頭とするミッションが投資誘致等を目的とし度々訪日して、同省の魅力をアピールしています。
(2)また、ロンアン省は愛知県、茨城県、兵庫県、和歌山県と交流があり、特に茨城県とは「人材送出・受け入れに関する覚書(2019年)」、兵庫県とは「経済交流共同声明(2017年)」をそれぞれ締結しています。ドゥック同省共産党書記をはじめ、訪日経験がある省政府幹部も多く、1月の意見交換ではさらに日本との人材交流を進めていきたい旨、発言がありました。
ロンアン省窓口:同省外務局国際協力室(e-mail:thinhlq@longan.gov.vn ※英語可)
※本文中の統計はベトナム統計総局(GSO)及びベトナム商工会議所(VCCI)が公開している統計を参照しております。